第16章 ◆雨乞儀式
「さなっ
大丈夫か?」
ふわりと受け止められ、
衝撃に備えて瞑った目をゆっくり開ければ
さなの目の前には夏目の姿。
その夏目の表情は
心底心配しているようで険しく
少しだけ青ざめていた。
「っ、ごめんなさい。
足滑らせちゃって⋯ありがとうございます。」
気付けば、
腹部の激痛は治まり
即座にその場に立ち直り
にこりと微笑むさな。
「また、苦しくなったりしたんじゃ⋯」
「全然大丈夫です!
ほら、もう歩くこともほとんど無いですし
あと少しなので出来ます。」
夏目の心配の声にも食い気味に答えるさなは
これ以上の心配をかけまいと
腹部の激痛のことは言わずに
手を広げ体の無事と共に笑顔を見せた。
「 ⋯、そうか。
けれど、
無理だけはしないで欲しいんだ。
⋯さな、」
さなの笑顔を見て
ふぅと息を吐き優しく微笑む夏目は
さなの頭にぽんっと片手を置いて
少し屈むようにさなと目線の高さを合わせれば
真剣な瞳でさなの真っ黒な瞳を見つめた。
「 ⋯?」
夏目のその行為に
さなはキョトンと目を丸くさせ
「 頼りないかもしれないけど、
俺が助けるから
⋯少しでも、頼って欲しい。」
「 っ。」
「 だから
無理に、笑わないで。
俺の前だけでも。」
続く夏目の優しい言葉に
さなの心はギュッと締まり
次第に頬を赤く染めた。
「 はい⋯っ。」
小さく返すさなの声。
夏目も照れくさそうに頬を染めれば
にこりと笑い、手を離す。
「 ⋯歩けるか?
向こうで皆が待ってる。」
「 はい、行きましょう。
⋯守ってくださいね、夏目先輩。」
心からの笑顔で夏目に言葉を投げれば
そのまま歩き出すさな。
「 あぁ、勿論。」
夏目も小さく言葉を零し
さなの後ろを続いて歩き出した。
「 ⋯チッ」
舌打ちが谺響していた事も気付かずに。