第16章 ◆雨乞儀式
「それに、その帯
嫌なニオイがするぞ。
⋯術が掛けられているようだな。」
夏目の膝上で
ピーピーと寝息を立てていたニャンコ先生が
不意にむくっと起き上がり、
隣に座るさなの膝上へと移動して
その帯をくんくんと嗅いだ。
「 なっ、どういう事だ?先生」
「 ⋯っ、!」
ニャンコ先生の言葉に
今度は夏目が目を見開く。
さなは声すらも出なかった。
「 ふむ、
さなが歩く度にその帯が
締め付けていたようだ。
だから座っている今は
落ち着いているんだろう。
あのまま歩いていたら
夏目の言う通りさなは倒れていただろうし
そうすれば、
雨乞いの儀式どころでは無いな。」
「そんな、一体誰が⋯?」
「 ⋯っ、」
ニャンコ先生の言葉に
静かに返す夏目と、
先程から声も出ないさな。
「それが
この雨乞いの儀式の試練なのか、
若しくは⋯
さなが嫁役という事に
面白くない輩の仕業だろうな。」
冷静に推測するニャンコ先生の言葉に
返す言葉も無く黙る夏目とさな。
「 ⋯いずれにせよ、
あの妖狐に確認した方が良いだろう。
仮に試練で無いとして、
このまま邪魔されてしまえば
儀式云々よりも
さなの身がもたんからな。」
「 ⋯分かった、ありがとう先生。」
「 ⋯。」
ニャンコ先生の言葉に一気に緊張が高まる。
ー⋯嫌な予感が当たらなければいいが⋯。
夏目の嫌な予感、
それはこの地に来る前
学校帰りの地上で感じた
少しモヤモヤとした感情。
それは、
さなが見ず知らずの妖の嫁という
役目への嫉妬心とはまた別の感情。
その感情を押し込め
ぐっと拳を握り締めて
隣のさなへ視線を移した。
「 さな、
もしこれが誰かの仕業なら
俺とニャンコ先生が何とかする。
でも、試練だとしたら
食い止められるか分からない。
続けられるか?」
その目は至極、真剣だった。