第16章 ◆雨乞儀式
ふわふわと緩やかに揺れる箱の中。
それは、この地に来る術として
さなと夏目とニャンコ先生が先程
乗ってきていた箱だった。
その箱は、子狐妖が
儀式の際に使用するとは言っていたものの
それは儀式の帰りに使用するものだったらしい。
行きは
儀式を雲海下の妖へと知らせる為に
鈴を鳴らし明かりを灯し
ゆっくりと進むのだそうだ。
しかし、
ニャンコ先生の威圧により
徒歩は強制的に終了され
止む無く使う事となった箱。
「全く、人間とは脆いものだ。
⋯だから、好かんのだ。」
「っ⋯」
そんな言葉が小さく聞こえていたのは
さなだけだった。
しかし、その言葉に反論の余地はなく。
真摯に受け止めるのみ。
「さな、」
そんなさなを見計らったかのように
隣に座る夏目が優しく声を掛けた。
「 ⋯?」
引き寄せられるように
さなが夏目を静かに見上げれば、
先ほどの顔色の悪さは大部と薄れ
真剣な表情で
さなを見つめる夏目。
「 苦しくないか?⋯着物。」
「 ⋯⋯えっ、」
思わず目を見開いた。
何故なら、
さなが着物の締め付けに悶えていたなんて
さな自身が必死に隠していた事もあり
箱に乗る事となった今でも
誰も突っ込ま無いくらい
気付かれていなかったから。
それにより、
このままやり過ごせると
確信していたからだった。
「ぁ⋯の、
それは⋯その、
⋯⋯
えっ⋯と、
⋯気付かれ、ちゃったんですね。」
この期に及んでも
何とか誤魔化せないかと頭を捻るも、
目の前の真剣な夏目の視線から
さなは誤魔化す事を観念して
溜めていたものを吐き出すように
ふっと辛そうに笑った。
「⋯はぁ、
どうして言わなかったんだ?
あのまま歩いていたら
倒れていたかもしれないだろ?」
「 ⋯ご、ごめんなさい。」
呆れたように、
でも心底心配した様子で夏目が話せば
さなも応じて控えめに頭を下げる。