第16章 ◆雨乞儀式
「 なぬ、!」
チリン、と鈴の音を最後に
ゆっくりと進んでいた一行の足は
ニャンコ先生の言葉により自然と止まる。
そして、さなが振り返ると
「 ⋯っ、ハァ⋯」
音も無くその場に崩れる見慣れた姿。
「 ⋯⋯⋯ぇ、」
そして、
そこからぽてぽてと降りて来るニャンコ先生。
着物の締め付けから来る苦しさも
履き慣れない真新しい下駄の痛みも忘れ
思わずその姿に駆け寄るさな。
「 夏目、先ぱ⋯っ
だ、大丈夫です、か⋯??」
詰まりながらも声を上げて
夏目の顔を伺えば
その顔は暗闇でも分かる程青く
浅く洗い呼吸を繰り返していた。
「 く、っくび、首が⋯
ぉ、折れるか、と⋯思った⋯、」
「 ⋯首、ですか?」
ゆっくりと挙げられた夏目の腕は
不器用な動きで自身の首に添えられ
その言葉と行為に首を傾げるさなに対して
苦しそうな笑みを浮かべた後
夏目の視線は
呑気に前を歩くリボンまみれのニャンコ先生へと
向けられた。
「 ⋯肩に乗るのは構わないが、ハァ
少しは、遠慮するか
減量、してくれ⋯先生。」
呼吸を整え次第に回復する夏目は
挙げた手をスリスリと
自身の肩から首にかけて摩った。
「 フン、貧弱め。
肩に乗れと言ったのは夏目、お前だろう。
お前の肩が弱過ぎるのだ。
もっと鍛えろ、
帰ったらボクシングだボクシング。」
ふいっとそっぽを向いて歩き続けるニャンコ先生。
そして、
そのまま先導していた子狐妖の前で止まり
「 歩き続けて日が暮れたぞ。
雲海下へと
儀式を知らせるには充分だろう。
タクシーを寄越さんか。
私達は夜明けまでには帰るぞ。」
「 はっ?た、たく?」
ビシリ、と言い放つニャンコ先生に
聞き慣れないワードにあたふたとする子狐妖。
「 最高端の社とやらに
瞬時に高速で行ける箱だ!」
「 はいぃい!畏まりました!!」
声を荒げるニャンコ先生に驚き
返事をしながらその場から走り去る子狐妖だった。