第15章 ◆狐ノ嫁入
ー・・・綺麗だよ。
そう、言おうとして
言葉を発する手前で
急に恥ずかしさがこみ上げ
夏目は口篭ってしまった。
「 なんですか?」
夏目の言葉の続きを催促するさなが
ひょこっと首を傾げて
夏目を見詰めるが。
「 いや、・・・な、何でも無い。」
伝える事が出来ずに
はぐらかしてしまった。
「 ⋯?」
構わず夏目へ視線を送り続けるさなだったが
「 それでは、
日照雨様とお会いして頂きます!」
ササッと夏目とさなの背後に回った
子狐妖が二人の耳元で大きく声を上げ
ササッと前方へと進んだ。
「 ビックリした⋯。」
静かな空間に響いた子狐妖の声は
夏目とさなの肩をビクつかせていたのは
言うまでもなかった。
そして、前方の垂れ幕が上がり
複数の足音が徐々に近づく。
「 ⋯さな、
無理だと思ったらすぐに言ってくれ。
無茶だけはしないで。」
少々緊張が張る間で
夏目はボソッとさなに耳打ちをした。
「 はい、頼りにしてます。先輩。」
気を張る夏目とは反対に
微塵も緊張が感じられないさなは
ニコリと笑って返事をした。
「 ⋯。」
その背後で、
難しい表情を浮かべながら
夏目とさなのやり取りを
終始睨み付ける妖が居る事も知らず。
二人は前方へと視線を集中させたのだった。
「 ⋯よりにもよって、何故人間なのだ⋯。」
何者かによって小さく呟かれたその言葉は
何者にも届かず、消えていった。