第15章 ◆狐ノ嫁入
そうして上がった畳の間。
前後には子狐妖が並び
中央にはさなの場所であろう
少し段があり
高くなっている座布団程の大きさの台。
そこに視線を向けながら
夏目は他の気配にも集中していた。
すると、
ーコンコンコン
またも、控えめなノックが響き
扉がゆっくりと開かれた。
「 さな様をお連れ致しました。」
開かれた扉からスッと入ってきたのは
この世界でいう女狐妖。
恐らくはさなの世話をする使用人である。
その身なりは細く
顔は面で隠しており
表情がいまいち分からないが
慣れているのか、手早い所作で
さなを誘導する支度を済ませた。
「 ・・・どうぞ、此方に。」
ゆっくりと畳の間に上がる使用人の女狐妖。
その後には
淡い桜色の色打ち掛けを丁寧に着せられ
髪を綺麗に結い上げ
少しだけ化粧を施されたさなが
女狐妖に手を引かれ扉を潜った。
あまり着慣れていないせいか
少し覚束無い足取りで
女狐妖に支えられながら
同じく畳の間に上がるさな。
夏目の姿を見つければ
緊張から強ばっていた表情は緩み
小さく微笑んだ。
「 ・・・っ。」
普段のさなとはまた印象の違う姿に
夏目は思わず頬を赤く染め
視線を泳がせる。
「 これよりは、夏目様。
さな様の側近にてお願い致します。」
「 えっ、あ、あぁ、・・・はい。」
夏目は視線を泳がせてしまっていたせいか
すぐ傍まで来ていた女狐妖には気付かず
その女狐妖から不意に声をかけられて
夏目は覇気のない返事をしてしまう。
「 ふふ。」
「 何だ?」
女狐妖とのやり取りの横で
既に定位置に座っていたさなが
小さく笑い声を上げる。
「 なんだか、
夏目先輩の和服姿って
新鮮ですね。素敵ですよ。」
ニコニコと笑いながら
ストレートに夏目を褒めるさなは
頬紅では無い自然な紅が頬に色付いていた。
「 ・・・そうか?
それを言うならさなだってー・・・」
「 ?」