第15章 ◆狐ノ嫁入
サッサと足袋を擦る音が複数聞こえ
次第にその足音が大きくなると
ピタリ、と止まる。
「 ・・・。」
思わず息を呑むさな達の前には、
綺麗に並んだ子狐妖の列の中央
子狐にしては明らかな大きさの違いのある
すらっと伸びた一つの影が目立っていた。
そして、
「日照雨様が御成で御座います。」
シンと静まり返る広間の中
日照雨様側からの号令が響くと
「 ・・・ほ、ほら!
さな様、夏目様
お立ち下さい!」
子狐妖が小声で二人に話せば
間髪入れずにさなの腰を掴み勢い良く立たせ
その横の夏目の腕を引っ張った。
「えっ?・・・!」
普段着慣れていない色打掛けを纏うさなは
急に立たされた事に足元が安定せず
ふらりと揺れるが、
「わっ、と。
・・・大丈夫か?」
同じくして子狐妖に無理矢理立たされた夏目が
傾くさなを優しく受け止め微笑む。
「ぁ、ありがとうございます。」
少し恥じらいながら、
ぎこち無く返事をして
直ちに姿勢を正すさなも
頬を染め、夏目に微笑んだ。
「この度は、遠路遥々
このような海雲の地へと足を運んで下さり
誠に・・・、誠に有難う御座います。」
夏目とさなの遣り取りが一段落着くと
丁寧な迎える言葉が響いた。
それは、先程から聞こえるような
子狐妖の甲高いものとは違い
低く落ち着いたトーンの声色。
夏目とさながその声のする前方へと
視線を向ければ、
子狐妖の列の中央に立っていた
背の高い妖狐が頭を下げていた。
そして、ゆっくりと頭を上げて
キリッと吊り上がる眼で
さなと夏目を確認し
子狐妖の先頭へ移動すれば
「私、雨乞いの神、日照雨と申します。」
夏目とさなに対して
ゆっくりとまた頭を下げた。