第15章 ◆狐ノ嫁入
ー・・・そういえば・・・。
「 学校帰りで制服のままでしたね・・・。」
「 あぁ、制服も一応学生の正装ではあるが
こんな海雲の世界では
さすがに通用しないか・・・。」
夏目とさなが各々
自身の格好を見直した後に
二人見合って苦笑いを浮かべた。
「 使用人が身支度の準備を整えております。
さな様はこちらへ、
夏目様と達磨狸殿はこちらへどうぞ。」
「 なぬ、私にも衣装があるのか。」
「 参列者様用に沢山御座いますので
使用人にお任せ下さい。」
「 ほう、大したものだな。」
子狐妖の案内により
廊下を挟んで左右の扉へ誘導される
さなと夏目とニャンコ先生。
二手に分かれて扉の中へ入る時
「 じゃあ、また後で。」
「 はい。」
夏目が軽く笑って手を振れば
さなも同じく笑って会釈をする。
ふわっと長い髪を靡かせて
扉の向こうへ消えていくさなを
少し心配そうに眺める夏目も
ゆっくりと自身の持つ扉を閉め
待機していた使用人の言いつけに従い
身支度を進めた。
・・・そして、
十数分間後。
「 愉快愉快ー!」
「 ・・・。」
ピョンピョン飛び跳ね
大はしゃぎするニャンコ先生を前に
夏目は呆れ立ち尽くしていた。
「 先生・・・、何なんだ?それ。」
「 何だと?正装だ正装!
見れば分かるだろう。」
夏目の言葉に飛び跳ねるのを辞め
キッと横目で睨むニャンコ先生が
顎をくいっと夏目に向けながら
くるっと回って見せた。
「 何処が正装なんだ・・・?」
頭にはリボン
首にもリボン
尻尾の付け根にもリボン
そして、
前足と後ろ足にも小さくリボンが付けられた
全身リボンまみれのニャンコ先生を見て
夏目は溜息を零し続けていた。
「 正装というより、
仮装じゃないか・・・。」
「 何か言ったか?夏目。」
「 いや、・・・何でもない。」
「 お前が真っ黒な着物を着ているから
目立つ私が羨ましいのだろう。ん?」
「 いや・・・、全然羨ましくはないけれど」
・・・寧ろこの着物で俺は安心だが・・・。