第15章 ◆狐ノ嫁入
「 さっ!
さな様、夏目様着きました。
どうぞ、中にお入り下さいませ。」
城のような造りの建物の前へ到着するなり
その豪勢な外観に見とれて
自然と足を止め
無言で建物を見上げる
夏目とさなとニャンコ先生。
その三人の前から小走りに
目の前の緩めの段差の階段を駆け上がり
ギィ、と音を鳴らし
観音扉の最大限に開ける子狐妖が
三人に向かって小さく手を振った。
「 ・・・相当な大きさ、なんだな。」
「 近くで見ると一層迫力が増しますね。」
「 ふふん、
これは酒風呂が期待出来そうだな。」
建物に対して呆気に取られる
夏目とさなを他所に
ニャンコ先生は己の欲望に忠実で、
三人の先頭をきって建物内へと進んだ。
「 ・・・なんだか、
夢見てるみたいですけど。
いつも通りのニャンコ先生が側に居てくれると
少しホッとしますね。」
「 あぁ・・・。
不覚にも、俺も同意見だよ。
無駄な安心感がある。」
さなの言葉に乾いた笑いを浮かべて
賛同する夏目。
二人もニャンコ先生に続いて
建物の中へと足を踏み入れた。
そして、
「 夏目様御一行が到着致しました!」
子狐妖の響き渡るその掛け声で
吹き抜けとなっている広間に
ピタリと揃って並ぶ子狐妖の仲間。
子狐妖の仲間の列の中央が
大きく開かれ通り道となり
その中を子狐妖が先頭を歩き始めた。
異様な光景に三人は顔を見合わせ
ゆっくりとその子狐妖の後に続いて中へと進む。
微動だにしない子狐妖の列を抜け
奥へと続く長い廊下を歩きながら
子狐妖がふと後ろを振り返った。
「 日照雨様に会う前に
一度、身支度をして頂きます。
男女に別れて部屋を用意していますので
お支度なさって下さい。」
「 え?身支度・・・?」
「 礼儀の範囲の正装で御座います。
いくらなんでもその格好は・・・。」
子狐妖は立ち止まり、
夏目とさなを頭の先から足の先まで
舐めるように視線を向けてから
語尾を濁らせた。