第15章 ◆狐ノ嫁入
恐らく術がかけられているであろう籠の中は
所々に煌びやかな装飾が施され
見た目以上に広く快適に過ごせる空間だった。
そして、籠の外からは見えない
外の景色を見渡せる小さな窓が
左右の壁に対象的に設置されていた。
ふわふわ、と揺られる感覚の中
夏目とさなは互いに左右の窓から外を眺め
ニャンコ先生だけは
何やら家具の中身を物色していた。
そして
「 どうなっている、何処にも酒が無いぞ!」
一心不乱に酒を探し
家具を調べ尽くしたニャンコ先生が
手ぶらでポテッと夏目の横へと座った。
「 ・・・何しに来たんだ、先生。
ここは居酒屋じゃないんだぞ。」
溜め息混じりにニャンコ先生を見下ろす夏目。
「 嫁入りの儀という事は所謂結婚だろう。
して、それは盃を酌み交わすのだろう?
酒くらい置いておくのが礼儀だ。」
「 用心棒が酒引っ掛けてるなんて
聞いた事が無いぞ。」
「 やかましい!
私にとって酒は
ガソリンのようなものなのだ。
酒が切れると動かなくなるぞ。
いいのか?夏目。」
小さな肉球で
夏目の頬を啄くニャンコ先生だが、
「 ・・・俺を脅したって仕方無いだろ。
酒、無いんだから。」
その肉球も慣れた手つきで軽く振り払われ
夏目にそっぽを向かれるニャンコ先生は
ムスッと臍を曲げた。
その様子を見てクスっと笑うさなが
また窓の外へと視線を向けた時
「 お待たせ致しました
間もなく、到着でございます!」
外から子狐妖の声が響いた。