第15章 ◆狐ノ嫁入
「 夏目先輩・・・ごめんなさい。
私に出来るのなら
力になりたいんです。」
子狐妖の前で屈んだまま
さなは背後に来た夏目へ振り向き
頼むように見上げた。
眉間に皺を寄せる夏目は
その表情を素直にさなへと向け
夏目もまた溜め息を吐く。
「 ・・・危ないと思ったら
すぐに撤退するぞ。」
「 ・・・!
はいッ!
ありがとうございます!」
「 いやはや、やってくれますかな!
有難き・・・有難き・・・。
この御恩は必ずお返し致しますゆえ・・・!」
夏目の言葉に先程までとは正反対に
花が咲いたようにパッと表情を明るくさせるさなが
すっと立ち上がれば
それに釣られるかのようにして子狐妖も
その場でぴょんぴょんと飛び跳ねた。
「 ふん、
夏目もさなと同じ立場なら
同じ事を言っていただろう。
・・・相変わらずお前は
さなに過保護だな。」
パタパタと喜ぶさなと子狐妖を横目に
夏目の肩に落ち着くニャンコ先生が零す小言。
「 うるさいぞ先生。
けれど、今回はなんだか嫌な予感がするんだ。
何事も無ければいいんだが
・・・先生、何かあったら
俺よりさなを優先してくれ。」
ニャンコ先生の小言に
夏目は神妙な面持ちで答える。
目の前の無邪気に子狐妖と戯れる
さなを見つめながら・・・。
「 ・・・私はさなの用心棒では無い。
夏目、お前の用心棒なのだ。
夏目とさなが危険な場合
私は迷わず夏目を救いに走る。
が、しかし、
さなも友人帳を持つ者。
気が向けば助けてやってもいい。
・・・お駄賃は高いがな?」
ニャンコ先生が
低いトーンで話し終われば
チラリと夏目と目を合わす。
「 あぁ、頼んだよ。先生。」
ニャンコ先生の言葉に
小さく微笑んだ夏目が
さなと子狐妖の前に立つ。
「 ・・・ほら、二人とも行くぞ。
雨乞いの儀式とやらに案内してくれ。」
「 喜んで仕りました!」