第15章 ◆狐ノ嫁入
「 日照雨様の・・・お嫁様・・・??」
ぷらんとぶら下がったままの子狐妖が
さなにニコニコと手を合わせている。
状況が殆ど分からないさなは
ただ、子狐妖の言葉を復唱するだけで
目を丸くしていた。
「 ・・・だ、駄目だ!さな
そんな、嫁になんて行かなくていい。
とにかくこの話は無しだ。
他を当たってくれ。」
はっと我に返り子狐妖をポイと落とした夏目が
まるで父親のような発言をしながら
咄嗟に目の前のさなの手を取り足を進める。
「 そんなー!
お待ち下さい!」
スタスタと早歩きで遠ざかる夏目とさな。
その後にニャンコ先生が付いて
三人の後ろ姿を追いかける子狐妖は
目の前にある石ころにも気付かない程必死で・・・
「 ぬわっ!」
ー・・・ビタンッ!!
その石ころに足を取られたと思えば
子狐妖は綺麗なフォームで
顔面から地面に激突した。
「 え・・・、
大丈夫?」
子狐妖がコケる音に反応して
さなが後ろを振り返ると
そこには地べたに突っ伏して
ピクリとも動かない子狐妖。
さなは思わず
夏目に取られていた手を静かに離して
子狐妖へと駆け寄った。
「 ぬ、ぅ・・・なんとも見っとも無い・・・。」
さなが子狐妖を起こし座らせると
子狐妖は俯き嘆く。
「 良かった、怪我はないみたいだね。
痛い所はない?」
さなは制服のポケットからハンカチを取り出し
子狐妖の全身に付いた砂を払いながら
その体を労わった。
「 ・・・なんと、お優しい。
私は痛くもなんとも御座いません。
日照雨様のお嫁様が見つかり
雨乞いの儀式が出来るのなら
私はこの姿さえ無くなっても良いと
思っております。」
目を潤ませながらさなの手を握り
さなの目を見つめる子狐妖。
その姿にさなが小さく溜め息を零した。
「 ・・・分かった、
そんなに言うなら協力するから。
だから、貴方は消えないでね。」
「 ・・・さな!」