第15章 ◆狐ノ嫁入
「 今度こそ、夏目レイコ様ですね!
是が非でも頼みたい事があるのですが
力をお貸し下さいませ!」
「 えっ・・・ちょっと、私のこと?」
先程の夏目とさなのやり取りを
一切聞いていない子狐妖が
目をキラキラとさせて
困惑するさなの足元にしがみ付いた。
「 ・・・全く、
こいつは目も悪ければ
頭も悪いようだな。
さっき夏目が
レイコは死んだと言ったばかりだろう。」
静かに夏目の隣に待機していたニャンコ先生が
殆ど悪口に当たる言葉を零しても、
その声には耳を傾けず
さなに飛び付こうとしている子狐妖を見て
夏目がため息をついた。
「 ・・・おい。
レイコさんは居ないって言っただろ。
この子も俺と同じ、
レイコさんの孫だ。」
しがみ付く子狐妖を引き離そうと
悪戦苦闘するさなの前に立ち
その子狐妖の首根っこを掴み
ひょいと引き離す夏目が
少し呆れたような声で子狐妖に伝えた。
「 へ・・・、そ、そうなのですか・・・?
しかし、女性ですよ、ね・・・?」
夏目の手によってぶら下がる子狐妖。
夏目の言葉にポカンと口を開け
小さく投げかける疑問。
「 あぁ、さなは女の子だが
レイコさんでは無い。」
「 ほうほう・・・。
夏目レイコ様は居ないが
末裔が居るのですね、女性の。
しかも、妖力も充分に高い・・・。
・・・なるほど。」
「 ・・・?」
ぷらん、とぶら下がりながら
顎に手をやり何やら考える子狐妖。
その子狐妖に疑問を浮かべるさなとは反対に
まさか、と
目をギョッとさせる夏目とニャンコ先生。
「 ・・・ならば、仕方がありませんね!
女性である貴女にお頼み申します!
是非、
日照雨様のお嫁様になって下さい!」
「 ・・・え!」
「 なっ!・・・おい!」
「 ふん、馬鹿馬鹿しい。」
夏目とニャンコ先生の考えは的を得て
考え通りの言葉を子狐妖がさなに発していた。