第15章 ◆狐ノ嫁入
「 あ、おいっ!」
タッと駆け出し
その影に向かう子狐妖に
夏目が待ったをかけるも間に合わず。
子狐妖は早い足でその影へと飛び付いた。
「 夏目レイコ様!」
「 わぁッ?!」
そして飛び付かれた
子狐妖の言う〝夏目レイコ〟。
いきなり飛び付かれ、
驚きの声を上げるその声は
夏目とニャンコ先生からすれば
聞き慣れたもので。
「「 やっぱりか・・・」」
薄々感じてはいた
子狐妖の言う〝夏目レイコ〟の正体。
子狐妖を追って行き着く先は
子狐妖が〝夏目レイコ〟を
押し倒している場面。
その場面を目の当たりにして
夏目とニャンコ先生は声を揃えた。
子狐妖の小さな体当たりにすら
倒されてしまうなんて
勿論、夏目レイコ本人ならば
こんな子狐妖に押し倒される事はないだろう。
・・・本人であれば・・・。
「 夏目レイコ様!」
夏目の目の前で
子狐妖が大きな尻尾を振りながら
子狐妖の下敷きになっている人物へと
笑顔を向ける。
その人物は、倒された衝撃に顔を歪ませ
何事か把握する為に
きょろきょろと辺りを見渡していた。
そして
その人物の上に乗り続けたままの子狐妖を
ひょいと掴んで退かす夏目が
スッと手を差し伸べる。
「 ・・・さな。
大丈夫か?」
「 夏目先輩・・・!
は、はい・・・。
あ、ありがとうございます。
これは、一体・・・?」
全く状況が分からないと言った表情の
さなの前に突如現れた夏目。
取り敢えず、差し伸べられた夏目の手を
遠慮がちに取り
その場に立ち上がったさなは
パッパとスカートの砂を払い落としながら
夏目に問い掛けた。
「 あぁ、ちょっと。
レイコさん絡みで・・・。」
その夏目の言葉で
大体の想像がついたのか。
さなが
声は出さずに納得した表情で頷いた。