第15章 ◆狐ノ嫁入
子狐妖の姿に小さく溜息を零した夏目は
その子狐妖の頭をちょんと啄く。
「 頭を上げてくれ。
・・・事情は分かったから。」
「 夏目様・・・!
では、
協力して下さるのですね!」
夏目の言葉で顔を上げた子狐妖が
パッと表情を明るくさせたが
「 協力してやりたいんだが
さっきも言ったように
俺はレイコさんでは無いんだ。
よく間違われるんだけど
俺はレイコさんの孫で
レイコさんはもう亡くなっている。」
夏目は子狐妖が勘違いしている事を
ゆっくり説明した。
「 な、・・・そんな、
そうだったのですか・・・何とお短い・・・。
そんな事とは知らずに勘違いをしてしまい
申し訳御座いませんでした、夏目様。」
レイコの死に哀しみ
夏目に謝罪する子狐妖が少し俯く。
「 いや、いいんだ。
あと俺は
妖でも狐でも無ければ
・・・女でも無いぞ。」
夏目レイコに間違われる事に慣れている夏目が
右手を小さく振りながら子狐妖に伝えると
「 ななな何ですとーーー?!
女性では無いのですかッッ?!」
子狐妖は今日一番の
限りなく悲鳴に近い声を上げた。
「 ・・・まぁ、そういう事だから
俺はその儀式に参加出来ない。
他を当たってくれないか。」
女では無いと伝え最も驚かれる事実を
不服に思いながら夏目はその場に立ち上がった。
「 しかし・・・!
・・・・・・・・・?」
立ち去ろうとする夏目を止め
夏目の腕を掴んだ子狐妖が声を上げようとすれば
その声は仕舞い込まれたままで。
子狐妖は、ハッと何かを感知したように
辺りを見渡した。
「 ・・・?どうしたんだ?」
子狐妖の様子を不審に思い
夏目が問いかければ
「 こ、この気配・・・!
間違いない!
・・・この気配こそ、夏目レイコ!」
そう言って
子狐妖は夏目の進行方向前方を凝視した。
そこには、薄く見える人影。
遠くて誰かは分からないが
次第に近付くその姿は
近付くにつれてハッキリと見えてくる。
そして、
「 夏目レイコ様!」
その人物に駆け寄る子狐妖。