第15章 ◆狐ノ嫁入
「 ご心配なさらずとも、
これは面にございますよ。」
夏目とニャンコ先生が上げた声に
ビクリと肩を震わせながら
すぐに説明を始める子狐妖。
「 面・・・だったのか、それ。
でも、・・・。」
パチクリと瞬きを繰り返し
言葉に詰まる夏目の視線の先。
それは割れた面を持った、
面と同じ顔の子狐妖だった。
「 ・・・。」
ー・・・面を取っても
顔が面と同じじゃないか・・・。
「 ・・・まるで金太郎飴だな。」
切っても切っても同じ顔の長細い飴
そんな飴に例えるニャンコ先生の独り言に
不覚にも同感してしまったことは
胸のうちに仕舞う夏目。
そんな夏目とニャンコ先生を他所に
子狐妖は割れた面を眺めている。
「 これはまた修理が必要でございますね。
・・・一体どれ程の馬鹿力を
初対面の私に向けたのか。
その神経が理解不能にございます、達磨狸。」
キッとニャンコ先生を睨みつけながら
独り言のように呟く子狐妖。
その言葉に夏目は疑問を浮かべた。
「 また修理・・・ってことは
過去にも割れた事があるのか?」
そして、隠すことなく
夏目は子狐妖に対して疑問を投げ掛ける。
「 えぇ、私の顔・・・あ、この面は
日照雨様がお作り下さった物でして
繊細な陶器で出来ておりますから
下品な力には崩れやすいのですよ。」
パッパと汚れを払い
割れた面を着物の内に仕舞う子狐妖が
ニコリと微笑みながら夏目に話すが
「 誰が下品な力だ!
あれしきの力で割れるなんざ
その陶器が脆過ぎるのだ!」
子狐妖の発言により
その背後でニャンコ先生が
ワーワーと騒ぎ立ててしまっていた。
しかし
そんなニャンコ先生に構う者はおらず・・・
「 それより、
日照雨様というのは
物も作れるのか?」
騒ぐニャンコ先生は放って話を進める夏目に
子狐妖も同じく、ニャンコ先生を無視し
夏目と向かい合った。
「 えぇ!それはもう一流以上の物を!」