第14章 ◆誕生ノ日
「 さな、
・・・俺は
さなと居る時間がとても
大切に思うんだ。」
薄暗い部屋に暖かい日差しが差し込み
窓からは涼しい風が吹き抜ける。
その光と風が優しく二人を包み、
真っ白なさなの肌を明るく照らし
さらりと纏うさなの黒髪を攫うように靡かせる。
そんな目の前のさなに向かって
夏目は言葉が自然と零れていた。
「 ・・・はい。」
優しく見つめられる薄い色素の瞳の側で
淡い色の髪が揺れる。
さなは夏目に見つめられながら
その切れ長な視線から目が離せない。
夏目の言葉を待つように返事をすれば
夏目は少し緊張したように
下唇を僅かに噛んだ。
「 さな、俺は
さなの事が・・・」
夏目がそこまで言った次の瞬間
「 おーーい夏目ーー!」
「 ッ!!」
「 ーーえ・・・!」
大きく響く聞きなれた声に
夏目とさなは肩を震わせる。
その声は
使われていない静かな部屋には
煩いほどに通るもので
二人は思わずお互いに少し距離を取り
声のする方へ体ごと視線を向けた。
「 おー、居た居た!
二人で抜け出して何やってんだよ。
ほら、肉冷めちまうぞ。」
「 ぬっ、抜け駆けなんて
絶対に許さんぞ!夏目!
こんな所にさなちゃんを連れ込んで・・・!」
ズンズンと部屋に入れば二人を怪しむ二人。
「 北本、西村・・・!
ご、ごめん。違うんだ、その・・・」
「 あの!
私が窓から見えるあの雲が見たいって
夏目先輩を誘ったんです・・・!
ほ、ほら、
なんだかニャンコ先生に
似てる気がしませんか?」
夏目を逸らすようにさなが間に入り
西村と北本の腕を取り窓まで引っ張ると
一番近くに浮かぶ一つの雲を指差す。
「 ん?そうか?」
「 は、はい!・・・に、似てる!
さなちゃんが言うんだ。
あれは夏目の猫だ!な?北本!」
さなに手を引かれ分かり易く赤面する西村は
いまいちピンと来ていない北本に
強い視線を送った。