第14章 ◆誕生ノ日
「 ・・・ね?似てるでしょ?」
殆ど雲を見ずに言い切るさなが
西村と北本に微笑む。
「 まぁ・・・似てないことも、無い・・・か?」
さなに微笑まれ
思わず頷かざるを得ない北本は
語尾を濁らせながら無理矢理肯定した。
「 ニャンコ先生雲見れた事ですし、
それじゃあ、戻りましょう!」
北本の言葉に数回頷くさなが
パン、と手を叩き
その場を〆て人差し指を立てた。
「 え?・・・あぁ。」
「 ふは、
そ、そうだね!うんうん戻ろう。」
さなの言葉に
やむを得ず頷く北本と
さなの言葉を全て鵜呑みにする西村。
二人はさなに背中を押されて
その部屋を後にした。
部屋からの去り際に
さなが夏目に
パチリとウインクした事は
二人には一切知られずに。
ー・・・相手の為を想う嘘。
妖が見える事を隠しながら生活する
夏目とさなにとっては必要不可欠なもの。
それは
妖が見える事を公言した後の
軽蔑の視線が怖いのではなく
心配の視線が怖いのだ。
ー見えない事程、怖いものは無い。
妖が見えない西村と北本にとって
その得体の知れないものに追われる
夏目とさなを想像すれば
どれ程恐怖を感じ、心配するか。
ただ笑い合って過ごせる日々が
小さくとも心配の色が混じる。
二人にとってはそれが辛いのだ。
だからこそ自然と零れる
相手の為を想う嘘
最初は抵抗があったものでも
今となっては
夏目とさなが共有出来る
少しの罪悪感と二人だけの秘密事。
そんな喜びを感じている二人だった。
そして、
さなの想われる対象に
自身も入っていた夏目は
その事実を実感し
心を暖かくさせながら
中庭へと戻る三人の後をついていった。
ー・・・俺もいつか、
さなの為につく嘘があるのだろうか。
そんな事を考えながら
皆と過ごし満喫させたの夏目の誕生の日。
「 私のケーキは何処だーーー!」
夜中にニャンコ先生の体当たりが続いた事が
唯一の盲点だった。