第14章 ◆誕生ノ日
「 どうして、さなが謝るんだ?」
さなの謝罪に
夏目は思わずさなの背中を擦る手が止まる。
さなの罪悪感からの謝罪も
まるで想像していなかったような
そんな声で。
そんな夏目に驚くさなは
自然と顔を上げ、目の前の夏目を見上げた。
「 え、えっと・・・、
・・・その、
な、夏目先輩に内緒で
友人帳の名前返そうとしてしまって
結局、私
夏目先輩に助けられてるし・・・
あと、・・・一昨日、
今日は、用事で来られないって
嘘ついたことも・・・
騙してるみたいで、ごめんなさい。」
声と肩を小さくしながら
頭を下げるさな。
そのさなの話す内容と
目の前のさなの姿に
目を丸くさせた夏目は
徐々に表情を緩ませた。
そして、
「 ハハッ。」
声にまで出てしまう夏目の笑い。
「 へ・・・?」
予想外な夏目の笑い声に
今度はさなが目を丸くさせ
夏目を見上げた。
「 いや、笑ってしまってすまない。
さな、
そんな事を気にしていたのか?
・・・内緒にしたり、
・・・嘘をついたり、
さなは俺に対して
罪悪感があるかもしれないけれど
どちらも、
さなが俺を思ってしてくれた事だろ?
・・・俺は、嬉しいよ。
内緒や嘘 って悪い響きに聞こえるけれど
相手を想う上でする事なら
それは善意になる事もあるんだ。
それに・・・、
今こうやって紫樽からさなを守れて
良かったと思ってる。
田沼に引き留められて
俺が此処に来なくても
さな一人でも切り抜けられたかもしれない。
・・・でも、
さなが危険な時間を知らずに過ごす方が
俺にとっては辛いんだ。
さなが妖から俺を守ってくれたように
俺も、さなを守りたい。」
ー・・・それは、妖だけでなく。
その最後の言葉は敢えて口には出さず
夏目は目を細めた。
「 先輩・・・。」