第14章 ◆誕生ノ日
「 な、な・・・レイコ・・・?
レイコはもう居ない・・・と。」
「 残念だが、俺もレイコさんの孫だ。
これ以上、さなに危害を加えるなら
容赦しない。」
恐らく夏目が拳で負かしたのだろう。
夏目が自身の拳を
目の前に構えながら威嚇をすれば
紫樽は触角で殴られた頬を擦りながら
目には涙を浮かべ、後ずさる。
そして
「 ご、ごめんなさ・・・い。」
涙目のまま謝罪をして
ゆっくりゆっくり
部屋の奥へと後ずさり・・・
「 ・・・ごめんなさい!」
さなと夏目に対して
大きく謝罪をし、そのまま
窓から落ちるようにして
去って行った。
「 ・・・っ。」
「 ・・・ふぅ。」
その場に残されたさなと夏目は
紫樽が逃げ去った窓を
暫く見詰める。
紫樽から庇うようにして
抱いていたさなを
夏目がゆっくりと離した。
・・・さなにとっては
かなり気まずい雰囲気であるが・・・
「 ・・・大丈夫か?」
夏目は気にも止めず
さなの体を案じた。
「 もう、苦しくないか?」
さなが俯いたままの状態な為
夏目が優しくさなの背中を擦る。
「 ・・・っ。」
先程まで苦しかったものはすっと取れているのに
違う意味で胸が苦しくなるさなは
素直に答えられず俯いたまま。
そんな、さなに対して
「 ・・・さな。」
優しく声を掛ける夏目は
ずっとさなの背中を擦り続けている。
「 ごめ、なさ・・・い。」
そして、
自然と零れるさなからの
謝罪の言葉。