第14章 ◆誕生ノ日
「 だ、駄目・・・ッ。
どい、て・・・おねが・・・ゲホッ。」
その場に崩れるさなに覆い被さる紫樽が
次第に体重を掛けていく。
「 さな、さな・・・
さなを食べれば・・・
私は・・・もっと、
元気になれる・・・。」
さなの抗議の声も虚しく
紫樽は大きく口を開け始めた。
そして、
ペタンと座り込んでいるさなの目の前に
球体である三つの体を縦に並べ
「 いた、だきま・・・す。」
そう一言、誰に言うでもなく紫樽は投げ掛ける。
・・・その紫樽の口は
普通の人間を一飲み出来るであろう巨大で
頭部である球体はもう既に
半分ほど開かれていた。
ー・・・駄目、動けない・・・。
逃げなければ、という本能とは別物のように
息苦しさから
その場から一切動く事が出来ないさな。
「 ・・・ッ!」
目の前で大きく開かれる紫樽の口に
思わず目を閉じる。
その時、
「 ぐぅあっ・・・!」
ーバシン!
という音と共に
突如聞こえる、紫樽の悲鳴。
ー・・・?
そして、
紫樽のその悲鳴から殆ど時間を置かずに来る
ふわりと包み込まれるような体温。
「 ・・・?」
さなが恐る恐る目を開ければ
「 ・・・名は返された。
これ以上
さなが身を削る義理は無いぞ、紫樽。」
そこにはさながよく知る横顔。
「 夏目・・・先輩・・・。」
そして、
さなが今一番
会ってはいけない人物・・・。