第14章 ◆誕生ノ日
それから、微々たる気配を辿り
屋敷内を走るさなは
特に妖気の強い二階へと足を進めていた。
「 ゆ・・・じんちょ・・・ぅ・・・
な・・・・・・え、せ・・・・・・」
ー・・・近い!
足を進める度に近くなる声。
それに釣られるようにしてさなは
ゆっくりと忍び足で
その声の元へと近づいて行った。
「 ・・・!」
そして、たどり着く
・・・とある一室。
田沼邸は分かり易い日本家屋だ。
並ぶように続く襖では
部屋の区別が付かないが
この広い屋敷の中で
田沼は住職である父親と二人暮らし。
使わない部屋はいくつもあり
さなが立ち止まった部屋も
使われていない部屋の一つであった。
「 ・・・よし、」
そんな襖に手をかけ、
さなは小さく意気込む。
そして、
ーガラッ!
その襖を勢い良く開けた。
「 ・・・っ!」
そして目の前に広がる
ツルツルとした大きな紫色の球体が三つ。
それが横に並び
先頭の球体には顔と触角、
真ん中と後ろの球体には何も無い
小刻みに動くその物体は恐らく妖。
「 んな・・・レイコ、か・・・・・・?
私が呼んだから、
来て・・・くれたのか・・・?」
いきなり開かれた襖の所に立つさなを見て
その妖は驚きながらも
興奮気味にさなに擦り寄った。
「 貴方、
友人帳に名がある妖、だよね・・・?」
足元に擦り寄る妖に
確認すれば
殆ど体当たりのような力で
さなに触れる妖。
「 そ、うだ・・・。
名を・・・返、して・・・欲し・・・ん、だ・・・。」
さなの問い掛けに
途切れ途切れで答える妖は
どうも力が弱ってきているようだった。