第14章 ◆誕生ノ日
「 ・・・っ!」
「 ッ?!」
その瞬間に夏目とさなが
ハッと表情を強ばらせ
お互いに視線を合わした。
「 ゆ・・・じん・・・ちょ・・・・・・」
先程より更に近付くその声。
二人は警戒を強めながらその声を辿る。
ー・・・この気配、友人帳の妖か・・・?
夏目は辺りを見渡し
それらしき気配を追って
気を集中させた。
そして、
「 ・・・これはッ!」
ー・・・屋敷の、中か・・・?!
声の気配を辿って着いた先は
屋敷の二階部分。
ー・・・まずい、屋敷に入ってるとなれば
西村達も危ない・・・!
早く、何とかしないと・・・。
夏目は
たっぷりと乗せられた肉の入った皿を置き
屋敷の中へ入ろうと背を向けた。
・・・しかし、
「 おい、夏目ー?」
「 どうしたんだ?」
西村と北本がいつの間にか夏目に駆け寄り
その表情を伺うようにして
夏目の前に立ち憚った。
「 っ!」
途端に、
集中していた意識が途切れる。
目の前に立つ
心配そうに夏目を覗き込む二人を見て
夏目は内心焦りを隠せない。
「 あ、いや・・・その・・・、
変な虫が飛んでいたんだ。
もう、
空高く飛んで行ってしまったよ。」
じっと横目で屋敷の二階部分を見詰めながら
西村と北本に軽く笑い
なんとか誤魔化す。
「 虫ー?」
「 そんな変な虫居たか?」
「 まぁ、
飛んでったんならいいじゃん。
続き続きー!」
夏目の誤魔化しも何とか通じ
西村と北本の気を逸らす事が出来たが、
「 ・・・夏目、
妖か?」
田沼は夏目の言動を見逃さず、
西村と北本には聞かれないように
こっそり夏目に耳打ちをした。
「 ・・・あぁ、
さっき声が聞こえたんだ。
・・・でも、
もうその声も聞こえないし
気配も遠のいたみたいだ。
もしかしたら、
此処に来てしまうかもしれない。
その時は・・・」
「 あぁ、分かってるよ。
〝あいつらを頼む〟・・・だろ?」
夏目の言う言葉の続きを
田沼が代わりに言えば
優しく微笑んだ。