第14章 ◆誕生ノ日
「 あ、おい、多軌・・・!」
「 駄目ですっ!」
「 え・・・?」
去り行く多軌を追いかけようと
夏目が立ち上がろうとすれば
その肩を弱い力で勢いよく押さえ付けられる。
「 ・・・さな?」
「 今日は、何もしないでください!」
急に来る肩の重みでバランスを崩し
再度、座布団へ座り込む夏目が
肩越しに振り返れば
そこには俯くさな。
「 さな・・・?」
優しく肩に伸し掛るさなの手を退け
その名を呼びかければ
未だに俯く姿で
「 ・・・?」
疑問に思った夏目が
さなの顔を覗き込もうと
首を傾げた途端、
「 おーい!準備出来たぞー!」
「 夏目ー!
主役も早く来いよ!」
中庭から呼ばれる声が響いた。
そして
「 あ、ほら行きましょ!」
俯く姿とは打って変わって
パッと明るく笑顔を向けるさなが
夏目の腕を引っ張った。
「 え?
・・・あ、あぁ。」
そんなさなに腕を引かれるがまま
中庭へと降りると
そこには
既に網の上に並べられている肉や野菜が
美味しそうな匂いを巻いていた。
「 しっかり食えよー?」
そう言って北本から渡される
お皿とそのお皿に
山ほど積まれた焼きあがった肉達。
「 これ、全部・・・食べるのか?」
てんこ盛り状態の肉を見て
思わず零す夏目の本音。
すると、
「 あったり前だ!
お前の為にーって
さなちゃんと多軌さんが
わざわざ、買い出しに行ってくれて
俺達が来る前にさなちゃんが
下味の処理をしてくれていたんだ!
たーんと、味わって食えよー?」
西村が声を大にして胸を張り言う。
「 そ、そうだったんだ。」
西村の言葉に、ふと
隣に居るさなを見れば
頬を少し染め顔を背けてしまった。
そして、
「 さな・・・」
そう名前を呼んで言葉を続けようとした時、
「 ・・・・・・じん・・・ちょ・・・・・・・・・せ・・・」
何処からとも無く聞こえる
禍々しい声。