第14章 ◆誕生ノ日
田沼の家へと入ってからも
西村に背中を押され進む夏目。
「 ちょ、何処へ行くんだ?」
「 いいからいいから。」
時折、抗議する夏目の言葉も
誰も気にすること無く
西村に流されていく。
そして、着いた先
チャポンと音を立てて飛び上がる
鯉の尾鰭。
その水面が
太陽の日差しでキラキラと光る。
「 此処は・・・」
そう、
そこは夏目にしか見えない池のある中庭。
過去に襖に映る池が見えるが
中庭には何も見えない、と田沼に紹介された
田沼と会った初期の頃の記憶。
その中庭へと通された夏目が
その記憶を思い出し
田沼に視線を向ければ
「 今日は、・・・ここが会場だ。」
そう笑って夏目の肩に手を乗せた。
「 会場・・・って?」
隣に立つ田沼を見上げる夏目が
その言葉を復唱したその時、
「 夏目ー、そこ開けてくれー!」
背後から聞こえる西村の声。
「 え・・・?」
振り返れば、
西村が指さす中庭と反対側に位置する襖。
西村は、中庭に降り
なにやら黒いテーブルのような物を運んでおり
手が離せない、といった状況らしい。
それを見た田沼が加勢するべく
中庭に降りていく。
「 あぁ、俺も手伝うよ。
此処に何かあるのか?」
何をするかも未だ把握出来ていない夏目だが
西村に言われた通り
襖に手をかけて
ゆっくりと開いた。
ー・・・パァァンッ!!!!
「 うわっ!」
開けた瞬間に鳴り響く、
複数の破裂音。
思わず顔を背ける夏目。