第14章 ◆誕生ノ日
助け舟とは、正にこの事である。
「 そ、そうなの・・・!
どんな子なのかなぁって。
学校でも見た事が無いし・・・ね?」
田沼のフォローによって
多軌はなんとか言葉を繋げるように
夏目に向かって必死に笑いかけた。
「 ・・・なんだ、そうだったのか。
それならそうと言ってくれれば
今日に限らずとも
もっと早く会わせていたのに。
・・・合流、出来るといいな。
さなも喜ぶよ。」
多軌の言葉もしっかりと受け入れる夏目は
屈託の無い笑みで返した。
「 ・・・。」
夏目のその言葉から
何故か
騙している感覚に陥り
心做しか
少し罪悪感を覚える多軌と田沼。
その時、
「 おーーい、夏目たちー!
遅いぞー!」
知らず知らずに
西村から遅れをとっていた三人。
少し先を歩く西村に呼ばれ
はっと前方を確認すれば
忽ち西村との距離を詰めるべく
三人は自然と小走りになる。
「 今行くよ!」
そう、いち早く西村の横へと
駆け出す夏目の後・・・
「 ・・・ねぇ、田沼くん。
夏目くん、
さなちゃんに今日の事
誘っていたんだね・・・。」
「 ・・・みたいだな。
さなちゃんも
上手く切り抜けたみたいだが。」
「「夏目(くん)が
少し天然で良かったな(ね)・・・。」」
西村と夏目には聞かれないように
田沼と多軌が声を合わせれば
思わず漏れる溜息。
なんとか、誤魔化せた二人は
西村と夏目から空いていた距離を詰めたのだった。