第14章 ◆誕生ノ日
「 あぁ、さなは用事があって
来られないんだ。
用事が済んだ後、
まだ皆が集まっていたら合流する
と言っていたよ。」
「 えっ・・・!」
「 そっかー・・・。
まぁ、用事なら仕方ないよな。」
西村に対して
夏目がさなの事情を説明すれば
多軌が思わず声を上げる。
その声が余りにも小さかった為に
聞き逃す西村とは反対に
しっかりと耳に入っていた夏目は
じっと多軌を見て疑問を浮かべた。
「 よーっし。じゃあ出発!
北本も別ルートから向かっているからな!」
遅れてきた西村の合図で進む一行。
そして、忘れていたと言わんばかりに
北本の存在を流すように報告する西村。
・・・北本とは、
夏目と同じクラスの友人であり
いつも行動を共にする内の一人だ。
西村と一緒に居る事が多く
やんちゃする西村を宥めたり
西村の扱いを知っている数少ない友である。
少し落ち着いているようで一緒に騒いだり
将又、貧血と言って倒れる夏目にも
直ぐに気を向けられる取締役のような存在。
「 お、おう・・・。」
遅れて返事をする夏目が
西村の後に続き、
さり気無く多軌の横へと移動した。
「 ・・・多軌。
さっき、俺が
さなが来られないと言った時だけど」
「 へっ?!
・・・!
あ、いや・・・、
あれはその・・・・・えっと。」
小さく声をかける夏目に
多軌は食い気味に答える割に
目を泳がせ、分かり易く
しどろもどろしていた。
・・・そこへ、
「 残念、だったんだろ?多軌。」
田沼が多軌の肩へ手を置き
夏目と多軌、交互に優しく微笑んだ。
「 田沼くん・・・。」
「 ・・・田沼?」
しれっと登場する田沼に
少し安堵する多軌と
更に疑問が増える夏目。
「 ・・・ほら、
多軌は夏目からさなちゃんの話を聞いていて
さなちゃんに会いたいーって
ずっと言っていたじゃないか。
それで今日はやっと会えると思っていたのに
来られないと聞いたから
少しショックだったんだろ?」