第14章 ◆誕生ノ日
「 あまり、無理はするなよ。
ただでさえ
今は健司さんの病院へ通ったりと
大変なんだから。」
「 は、はい・・・。」
夏目の為に、と皆で計画立てたサプライズを
自分の所為で台無しにする訳には行かない。
咄嗟についたダイエットと云う嘘から
本気でさなの体を気遣う夏目に
さなは表に出さない程度に心を痛めた。
ー・・・私、嘘って苦手かも・・・。
上手くつけない嘘。
・・・ついた所で
罪悪感に駆られてしまう嘘。
そんな嘘を上手く使い熟す事の出来る
名取辺りを思い浮かべながら
己の不甲斐無さにさなは少し落胆した。
その様子を知ってか知らずか・・・
「 それより、さな。
明後日、
田沼達と出掛ける予定なんだ。
その時に多軌という俺と同じ学年の
女の子も来るんだけど、
さなも一緒にどうかな?
・・・その、
女の子一人というのも
心許無いかと思うんだ。」
「 ・・・・・・え。」
まさか、とも言えるような夏目からの誘い。
誘う夏目は少し頬を赤く染めながら。
しかし、
さなにとっては更なる困難である。
・・・それは先程、
多軌と既に計画立て知っている話。
しかもそこにさなは加わっており
サプライズの登場、という設定なのだ。
初っ端からさなが参加していれば
サプライズでは無くなってしまうし
誕生日パーティの何の準備も出来ない。
「 えと・・・」
更なる嘘をつかなければならない状況に
さなの頭は混乱していた。
・・・が、
「 偶には息抜き、というのも兼ねて
皆と過ごしても罰は当たらないだろうし。
・・・それに俺も、
さなと一緒に・・・。」
そこまで言って夏目は口篭る。
「 ・・・?」
さなが夏目を見上げ
その先の言葉を待つ視線を感じ
夏目は視線をも逸らしてしまった。
「 あ、いや、何でも・・・無いんだ。」
そして、
言いたい事も逸らしてしまったのだった。