第13章 ◆本音の絆
「 え?・・・ぃや・・・、
しあわ、せ・・・だなぁ・・・って・・・。
ご、ごめん・・・な、さい・・・。」
寝たままのさなの頭上で繰り広げられる
三人の口論は、
さなにとって
安心感を齎す材料には十分だった。
さなの様子を案じて式に見張らせる的場と
同じように札で代用する名取、
その二人の行動を叱る夏目は
勿論、さなの為に声を上げたのだ。
そんな三人のさなを思う気持ちが
さな自身にも痛い程伝わった。
・・・素直に生き、
気持ちを言葉に乗せて交わす。
簡単なようで実は難しいそれは
身内であった筈の健司とは
一切交わされた事がない。
それを補ってくれる様に
自然と紡ぐ三人のこのやり取りは
今のさなにとって
あの辛い夜を越える為の支えのような
そんなかけがえの無いものの様に思えた。
そうすれば自然と零れる笑みに
知ってか知らずか
揃いも揃って首を傾げる三人。
喋り辛い中、懸命に言葉を繋いで
さなが謝罪をすれば、
目の前の三人は更に首を傾げていた。
「 ・・・どうして、さなが謝るんだ?」
「 そうだよ、
煩くしているのは夏目だよ?」
「 って、どうして俺だけ・・・!
そもそも、名取さんと的場さんが・・・」
「 はいはい、分かったから夏目。
もう札には頼らないよ。
・・・札には。」
「 ちょっと、名取さん・・・!」
「 全く此処は病室と言うのに
喧しいお二方ですねぇ。
これでは彼女が休まらないでしょう。
我が的場一門の屋敷を一つ与えますので
来るといいでしょう。
妖からも、
悪 い 虫 からも
守って差し上げますよ。」
「 あ、ちょっと的場さん!
さなをまた誘拐するつもりですか・・・!」
「 悪 い 虫 とは
聞き捨てならないな・・・静司。」
「 ・・・・・・・・・。」
一体、この三人の会話の行く末は何処なのか。
一切の収拾がつかないやり取りに
さなは挟む言葉も無く見守っていた。
そして、
ーコンコンコン
まるで助け舟のように鳴らされる扉