第13章 ◆本音の絆
「 何を言っているんだい夏目。
静司のように
さなちゃんを式に見張らせていただって?
・・・私はプライベートを侵害するような
そんな手段は取らないさ。」
ニッコリといつもの笑顔で
夏目の肩にポンと手を置く名取。
「 ・・・。」
先程の夏目と的場のやり取りを
一部始終聞いていたようで、
名取にも向けられた
夏目の疑いの眼差しを撤回させるように
名取は自身の無罪を主張するが、
「 ・・・私は札に教えてもらったんだ。」
夏目に向ける屈託のない笑顔のまま
人差し指と中指に挟んだ人形の札を
ヒラヒラと見せる名取。
「 ・・・。
・・・って、
めちゃくちゃ見張ってるじゃないですか!」
思わず、
肩に乗せられた名取の手を振り払い
またもや声を荒らげる夏目。
・・・ここまで来れば
夏目は止まらなかった。
「 大体、
札だろうが式だろうが関係ありませんよ!
二人共のそれは、ストーキング行為
と言う立派な犯罪行為ですっ!
もっと普通に
見舞いに来てください!」
捲し立てるように言い放つ夏目が
ゼェゼェと荒い呼吸を繰り返す。
「 まぁまぁ、夏目
そんなに怒らなくても。
・・・さなちゃんは
ずっと眠っていただろう?
私生活を覗いていた訳じゃあるまいし・・・」
「 ・・・そうですよ。
それに、
彼女が目覚めてから見舞いを行う方が
効率も良いでしょう。」
夏目の言葉に何一つ
己の意思を変えない大人二人に
反省の色は皆無である。
「 ・・・。」
そんな二人を前に
もう出る言葉もない夏目が
頭を項垂れさせて大きな溜息を吐いた。
そして、少しだけ静かになる病室内
「 ふッ・・・」
そこに、小さく吹き出すように笑う
さなの声が響き渡った。
「 ・・・?」
「 なんだい?」
「 何か、可笑しな点でも?」
振り返る夏目が首を傾げ
名取と的場は笑顔のまま
さなに問い掛けた。