第13章 ◆本音の絆
「 ・・・さな、
先生を呼んでくるよ。」
ふと、立ち上がる夏目が
さなにそう告げた。
「 ・・・せん、せ・・・い?」
「 あぁ。
さなは丸二日
眠っていたんだ。
皆、心配していたよ。」
夏目は握ったままのさなの手を離し
掛け布団の上にそっと寝かせる。
そして、空いた手で
優しくさなの頭を撫でた後
ゆっくりその手を離し
「 だから、
悪い所が無いか診てもらわないと。
・・・すぐ、戻るよ。」
そう笑って、
静かに部屋を出た。
「 ・・・ふふ。」
パタ、と閉まる病室の扉の音。
それを聞き終えたさなは
自然と笑みを零していた。
・・・病室を出ていった夏目は
学生服を着たままの姿。
恐らく、学校を遅刻して
毎朝病院に足を運んでいたのだろう。
封の閉じられたお見舞いの品々が並べられる
サイドテーブルを見れば
夏目が伝達係として学校の皆から預かった物を
放課後病院まで運んでくれていた事も
さなには容易に想像出来た。
そんな病室の窓から見える景色は
太陽の光がキラキラと反射する
真っ青な海。
その景色からして
さなが寝かされているのは
健司を送った大型の病院。
自分たちの住む町からは
電車を乗り継ぐ程距離のある港だ。
その距離を一日にして
二往復も行き来をしてくれている夏目に
申し訳ない気持ちと同時に
特別な気持ちが沸き上がるさな。
すぐに戻る。と
ついさっき出ていった夏目が戻るのを
待ち遠しく思うさなは
自分の状態も忘れていた。
そうして、
夏目が出ていってから五分もせずに
病室に入ってくる人物が二人・・・
「 やぁ、さなちゃん。
目覚めたんだって?」
「 札の見舞です、
すぐに良くなるでしょう。」
大きな花束を抱え、相も変わらず目立つ名取と
一体何の札なのか、束になった札を
綺麗に紐で結び自身の顔の横に掲げる的場。
「 ・・・・・・・・・・・・へ・・・」
いろんな意味で驚きを隠せないさなだった。