第13章 ◆本音の絆
「 お見舞いに来てみたら
夏目が詰所へ走って行く姿が見えてね。
きっと、目を覚ましたんだろうと
走って来たよ。」
「 ・・・周一さんが走ったお陰で、
要らぬギャラリーまでも
付いてきたようですが、良いのですか。」
名取は祓い屋の仕事では無い時の姿、
所謂、俳優の名取周一となって
汗さえも光る仕草で
病院内を駆け抜けてきたらしい。
的場の言葉に名取とさなが扉を見れば
病室の扉が少し開けられ
その隙間からはハート型となった目がいくつも
病室内を覗き込んでいた。
「 あれって名取周一よね?」
「 望月さんのお知り合いかしら?」
「 あ、やだ!こっち見てくれたわよ!」
「「 素敵ー!」」
こそこそと覗きながら
最早、内緒にすらなっていない
女性看護師の会話が筒抜けである。
「 ・・・。」
その様子をさなが
引き攣った笑いで誤魔化していると
名取が作られたような溜息を一つ零した。
「 ・・・仕方ないね。
何処に居たって、
煌めいているという事は罪になるみたいだ。
少し、相手をしてくるよ。」
そう言って名取は髪をかきあげ
女性看護師を宥めに扉の外へ向かった。
「 ・・・。」
・・・案の定、
名取が扉を出た瞬間に沸き起こる黄色い声。
程なくして女性看護師達と名取が
騒動に駆け付けた看護師長から
お叱りを食らったのは言うまでもない。
「 俳優というのも、
善し悪しですね。
・・・どうです?
名取の者が鬱陶しくお思いなら
的場一門に入る、という方法もあります。
私が誠心誠意、護りますよ。」
賑やかな廊下を見て軽く鼻で笑う的場が
スッとさなに顔を近付け
圧迫感満載の勧誘をする。
「 ・・・やッ・・・、
けっ結構・・・です。」
さなは思わず
引き攣った笑顔さえも消えて
的場の一途に見詰める視線から
咄嗟に目を逸らし即刻で断った。
「 ・・・ふふ、そうですか。
・・・残念。」
そう言って顔を引く的場は
全く残念そうな表情はしておらず
寧ろ、さなの反応を見て
愉しそうに笑っている様だった。