第13章 ◆本音の絆
「 ・・・さな??」
ドアへと伸ばした手を止め、
ベッドの方へと振り返る夏目が
さなに呼び掛けた。
「 ・・・。」
しかし、
さなのその姿は
先程と同じ寝ている姿で
動く気配はない。
そんな病室内には静寂が続いている。
「 ・・・さな?」
夏目は部屋を出て行くのを辞め
その足を再度さなの眠るベッドへと向けた。
ー・・・さっき、
確かに声が聞こえた・・・。
夏目はゆっくりとベッドに戻り
もう一度、ベッド脇の椅子に腰掛け
さなの無抵抗な手を
両手で優しく握る。
「 気のせいか・・・。」
ふっと笑い零す
少し残念そうな言葉。
眠るさなの姿はさっきと変わらない。
「 ・・・今度こそ、行ってくるよ。」
まるで、人形のように
静かに眠るさなの姿に
夏目が優しく笑いかけ
握るさなの手を
ゆっくりベッドへ戻そうとした。
その時だった、
「 ・・・?」
微かに感じた、
さなの手から伝わる一瞬の振動。
夏目が視線を向ければ
弱々しくも、
しかし確りと握り返されている
夏目自身の手。
「 ・・・さな?」
握り返された手を
抱き締めるようにして
今度は夏目が強く握った。
そして、そのまま
さなの方へ視線を向ければ
「 ・・・ん・・・・・・・・。」
ピクピクと動くさなの睫毛。
そして、
「 ・・・・・・・・・?」
ゆっくりと深い瞬きを繰り返しながら
大きく開かれる真っ黒な瞳。
・・・その瞳は天井を見詰めた後、
視界に映る夏目を捉えた。
「 せん、ぱい・・・?」
「 さな!」
夏目の歓喜の声が病室内に響く。
夏目の優しい笑顔は大きく
喜びの混じえたものに変わっていた。