第12章 ◆夜が明け
「 けん、じ・・・さん・・・ッ。」
健司の暖かい手が
さなの顔半分を覆うように
涙を拭いながら添えられる。
その手を確りと握り返すさなが
呼吸を整えた。
「 それなら、
・・・生きてください。
その気持ちがあるのなら・・・
・・・わ、私の保護者として、
ずっと・・・あの家で・・・
私の側で・・・
生きていて、ください・・・ッ!」
力の無い健司の手を
まるで、その体温を確かめるように
さな自身の頬に当てる。
所々途切れながらも、
さなはその心を言い切った。
「 ・・・さな・・・ッ。
ゲホッ!
ぼ、僕・・・は・・・・・・ゲホッ!
ガハッ・・・ぐ・・・ぅ・・・ッ!」
「 け、健司さん・・・?」
健司が何かを言い掛けた矢先
激しく咳込み目を閉じる。
「 健司さん、
しっかりして下さい・・・!」
応急処置を終えた名取が
健司の異変に気付き肩を叩くが、
健司は浅い呼吸を繰り返すだけで
返答は無い。
「 ・・・全く、
いつも身勝手なお方ですね。」
痺れを切らしたように的場が吐く。
「 ・・・ッ。
ニャンコ先生、お願いだ。」
その場に立ち上がる夏目が
割れた窓に視線を移し
そのまま小さくニャンコ先生を呼んだ。
「 ふん・・・、世話の焼ける。
こんな奴助けるなんざ、
揃いも揃って阿呆のお人好しだな。
帰ったら
私のシャンプー三回するんだぞ、夏目。」
悪態を付きながらも
ボフッと音を立てて
ニャンコ先生が大きな白狐、
本来の姿に変わる。
「 夏目、行けるかい?」
「 えぇ、大丈夫です。
急を要するので。」
名取が夏目に申し訳なさそうに問えば
夏目は二つ返事で頷く。
その言葉を聞いた名取が
健司の体を起こすべく健司の肩を支えた。
「 夏目くん、
病院には私が連絡しておきます。
他の祓い屋達への説明や
後処理もありますから
終わり次第、私も向かいますが
・・・よろしく、頼みましたよ。」
的場も少し困惑の表情で
夏目に話し掛けた。
「 ・・・分かりました。」