第12章 ◆夜が明け
「 ・・・・・・えっ。」
俯き、グスッと鼻を啜るさなが
その微かな声を聞き顔を上げる。
「 ・・・ガハッ・・・!
ぅ、さな・・・ッ」
さなが顔を上げると
健司は薄らと目を開けており、
苦しそうに呼吸をしながら血を吐き
か細い声でさなの名を呼んだ。
そして、
健司の頬に添えていたさなの手が
力無く握られる、
・・・健司の赤く染まった手によって。
「 け、健司さん・・・っ!」
「 ッ!!」
ー・・・生きている!
その場に居た全員が驚きを胸の内に吐き
健司の浅く呼吸をする姿を確認した。
少し離れた所で見守っていた名取と的場は
お互いに顔を見合わせ
すぐさま健司の元へ駆け寄った。
「 ・・・健司さん、
すぐ手当します。」
「 ゲホッ・・・な、とり・・・ガハッ。
否、いい・・・。」
部屋に置いてあるタオルで
健司の腹部を素早く止血をする名取の手を
健司自身が弱々しく止める。
健司が言葉を発する毎に
ドクドクと口から溢れる様に流れる血液。
「 ・・・健司さん・・・。」
「 何を言ってるんです・・・。
即死なら兎も角、
貴方はこれしきの事で音を上げる人では
無いでしょう。」
不安げな表情で見詰めるさなを
名取は一見してから視線を落とした。
そして、健司の腹部に
手早くタオルを巻き付け止血していく。
「 名、取・・・
これ、は・・・報い、だ・・・。
・・・ゲホッ、ゲホ
さな・・・を、ッ・・・
手に掛けようとした・・・。」
交戦での鋭い視線とは打って変わり
至極優しく弱々しい目で
健司はさなを見上げていた。
「 ・・・ッ!」
今度は健司がそっと
さなの頬に手を添えて
止めどなく溢れるさなの涙を掬う。
「 ・・・さな、
す、すまな・・・かっ、た・・・
ガハッ・・・!」