第12章 ◆夜が明け
「 そんな・・・
・・・嘘、・・・でしょ・・・?」
ふらつく体を夏目に支えられながら
仰向けに倒れる健司の肩を
力なく揺らす。
その健司の腹部は真っ赤に染まり
妖の羽根が見事に刺さっている。
ー・・・妖と名取と的場が対峙していた際
腕を縛る札を解き
素早く移動していた健司は
夏目より早くさなの前に居た。
妖力の殆ど無い健司にとって
薄ぼんやりとしか見えないはずの
妖の投げるキラっと光る羽根の先端。
それだけに集中して
健司はさなの盾となったのだ。
「 健司さん・・・!
ねぇ、健司さん・・・ってば・・・。」
健司の腕に巻かれていた筈の札は
どこにも見当たらない、
自由に動ける筈のその腕は微動だにしない。
真っ赤に染まる床に
ただ、倒れているだけ・・・。
「 健司、さん・・・
起きて・・・下さい・・・
お願い、お願い・・・だから・・・。」
さなはまだ暖かい健司の頬に手を添えて
懇願するように健司を優しく起こす。
「 ・・・。」
そのさなの震える声だけが室内に響き
夏目を始め、名取と的場
ニャンコ先生までもが
一切の言葉が出ない状態で
さなを見守っていた。
「 どうして、私なんかを・・・
助けたの・・・?
・・・どうして・・・。」
「 さな・・・。」
さなの瞳に浮かぶ水滴が光る。
それは、重力に堪えきれず
大きな滴となって
健司の腹部へ零れた。
「 ・・・・・・・・・・・・ぅ・・・。」
微かな息を乗せて。