第12章 ◆夜が明け

夏目が息を潜め移動しながら

徐々にさなの元へ近付いていく。


それと比例するように

妖は名取と的場の元へ

ゆっくりと足を進めていた。




「 ･･･。」




ーもう少し、もう少し･･･。



腰を屈め、低い体制で

ゆっくりと移動する夏目。


あと少し、と心の中で呟きながら

額に小さな汗の雫を作っていた。



その夏目が

さなの正確な居場所を確認する為に

妖から目を離した。


その瞬間、






ーバキン･･･ッ!!!









「 ッ!! 」



声を上げる暇もなく

瞬間的に息を呑む。




「 何っ？」


「 ･･･？」




予想だにしない大きな物音に

名取と的場も表情を強ばらせた。


夏目も摺足で動かしていた足を即座に止め

思わず、妖の方へと視線を戻せば

そこには後ろを向き

片手を上げた状態で立ち止まる妖の姿。



「 ･･･なん、だ？」




妖の出で立ちから

妖の仕業なのは薄らと分かる。



夏目は音のした方を辿りながら

妖の目線を追い、

音の根源となる場所に目を向け

辿り着いたのは


一枚の羽根が鋭く刺さる

夏目が移動する筈の目的地･･･。




「 ･･･え、･･･は･･･？」





未だ微かに残る黒煙の中

ついさっきまで無かった

真新しい血飛沫が広がる。


そして

先程確認した横たわる影は

変形し、盛り上がっていた。




その光景に夏目は

言葉にならない声を上げ

屈めていた腰も伸ばし

モヤモヤと黒煙が邪魔する視界を

目を凝らし確認する。


その間の

嫌な心臓の高鳴りは抑えられない。




「 ･･･。」




それは一瞬の出来事。


目視では追い付けないほどの速さで

妖が己の羽を鋭い武器とし

投げ付けたのだ。






･･･さなに目掛けて。








「 ･･･う、そ･･･だろ･･･？」