第12章 ◆夜が明け
「 周一さん、勝負しましょうか。
どちらが仕留められるか・・・。」
「 ・・・何を言っている。
使える物は使う主義はどうしたんだ?
仕留めたら使えないぞ。」
「 えぇ、そのつもりでしたが
さなちゃんを狙った時点で使えませんね。
私の心情を含め・・・私が射ちますよ。」
「 ふっ、・・・どうだか。」
名取と的場のやり取りを
何処か遠くで聞きながら、
二人から距離を置く夏目。
「 ・・・。」
夏目にとって名取と的場の二人の会話は
少しだが安心感のあるものだった。
夏目は二人の後ろで
さなを救出出来る隙を待つ。
それは二人のうち、どちらかが
この黒煙の根本となる妖を退治する事。
黒煙が小さくなるにつれ
夏目の緊張も高まる。
・・・それは、名取と的場の二人も同じだった。
そして
夏目がごくりと生唾を飲み込んだ時、
「「・・・来る。」」
先程までしていたような
軽やかな会話ではない
低く、鋭い二人の声が重なった。
その瞬間、
バサッという音と共に黒煙が散らばり
窓の付近が晴れる。
「 ・・・?」
二人の背後に居る夏目が
少し身を乗り出して目を凝らした。
「 ・・・さな?」
ぼやっと視界に映る
窓の側で横たわる影。
そして、その傍らに立つもう一つの影・・・。
その影には
羽根のような物が付いており
小さく揺れているのが確認出来る。
羽根の生えた影は
ヒタヒタと、ゆっくり
足音を鳴らし
夏目の居る方に移動を始めた。
「 お前・・・会話は出来るか?」
近付く影に向かって
札を構えながら名取が問う。
しかし、
「 ガ・・・ァア・・・グゥ・・・ッ!」
最早答えとも言える妖の唸り声が
即座に部屋に響いた。
「 ・・・まぁ、無理だろうね。」
少し皮肉るように零す名取の言葉。
そんなやり取りに構うこと無く
「 ・・・。」
ー・・・二人が妖と対峙した時
さなの元へ走る・・・!
夏目は二人の左側へと
静かに捌け始めていた。