第12章 ◆夜が明け
「 先生、離せ!
まださなが窓の方に居るんだ!」
ずっしりと背中にぶら下がるニャンコ先生に
夏目が後ろに仰け反る。
なんとか転けないように踏ん張る夏目だが・・・
最近
暴飲暴食に拍車をかけていたニャンコ先生、
その増量ぶりは著しく
ぼってりとしたその重みが
ぶら下がる事により
夏目は、瞬時に前へ踏み出すことが
難しいのだった。
そんな焦る夏目に対してニャンコ先生は
更に体重を掛けた。
「 夏目、落ち着け阿呆。
お前が行った所で
さなを助けられるなら
既にあの二人がとうに対処している。
・・・あの黒煙の正体、
それは恐らく
先程の術で派生した妖だ。
無理に造られ
その依代を探して
此処に来たんだろう。
息の根が止まってない者にはつけないさ。
ここは祓いのプロに任せるんだな。」
もくもくと広がっていた黒煙が
次第に収まりを見せつつある頃に
ニャンコ先生は余裕の素振りで
夏目の肩に落ち着いていた。
「 で、でも・・・!」
「 夏目、
ここは任せなさい。」
「 君は彼女のフォローにでも
回って頂きましょうか。」
ニャンコ先生の重みで片方に下がる夏目の肩。
そんな自身の肩に目を向けて抗議する夏目の
反対側の肩をポンと叩く優しい手。
名取がニコリと首を傾げて夏目を見ていた。
それに続くように名取の横で弓を構える的場が
チラリと夏目を見てすぐ
目の前の黒煙へ視線を戻した。
「 名取さん・・・、
的場さん・・・。」
夏目が小さく呼ぶ二人の名。
それを確りと耳に入れた名取と的場は
札を構え、弓を構え
互いに背中を合わせて
目の前の標的へ意識を集中させた。