第3章 ◆二人出会
窓の外から妖がさな目掛けて
体の大きさからはバランスの悪いように見える
その細い腕を存分に振り散らしている。
「 もしかして……」
嫌な予感がして
さなは渋々、鞄を開けると
「 やっぱり…」
しっかりと友人帳が光り、反応していた。
はぁーとため息を零すと
窓に手をつき
「 ここじゃ、だめだよ。」
そう断りを入れ、
放課後に森で名を返すことを約束した。
一旦は引いてくれたらしい妖を見届け
その場を後にしようと
方向を変え踏み出すと
ひとりの男子生徒がこちらを見やるのに気付く。
「 あっ、な、夏目……先輩?」
初めて会う先輩であろうその男子生徒に対し
知らないはずの名前が口から勝手に発せられる。
そのことにさなは自分の事ながら
驚きを隠せないでいたが
驚いていたのはその男子生徒も同じだった。
そのとき
「望月ー!」
渡り廊下から担任の先生が
さなを呼ぶ。
きっと予定の時間を過ぎても現れないことに
痺れを切らして迎えに来たのだろう。
さなは名前を呼ばれ、
咄嗟に返事をすると
目の前の男子生徒に頭を下げ、
先生の元へと掛けて行った。
……ーなんで私、初めて会うのに
〝夏目先輩〟だなんて言っちゃったんだろう。
…夏目って、
あの人が、あの夏目…先輩…?
さなは先生の後につき
職員室まで到着すると、
簡易テーブルとパイプ椅子に座らせられる。
先程の男子生徒が頭から離れず
幼少期に自分が叔母に引き取られるまでの間
親戚が各々噂していた
〝夏目貴志〟という少年を思い出していた。
……ー違う、きっと違う。
あの夏目貴志は、もっと霊能力者のような
数珠とか沢山つけてお札を体中に貼ってるような
きっとそんな人!
あんな、美形なはずないよ。
〝夏目先輩〟と呼ばれて反応したのはたぶん、
同じ苗字なんだきっと。
さなは、ほとんど無理矢理のような推測で
自己解決をして
担任の先生と共に目の前の書類を片付けた。