第11章 ◆人と家族
暗闇の中、床に蹲る健司の姿に
さなはゆっくりと近付いた。
「 さな、」
途中、名を呼びながら
その場を離れるさなの腕を掴み
注意を促す夏目に向かって
「 大丈夫です。」とやんわり
夏目の手を振り解きながら
そっと健司の前に膝をつく。
「 ・・・健司さん、・・・?」
俯く健司の顔を覗き込むように
自身の顔を傾けるさなが
健司の腕をそっと触れた時・・・
「 ・・・ッ!」
さなが触れたのは
人の腕ではなく
長く細い棒のようなもの。
それは健司の腕から突き出るようにして
伸びており、
「 ・・・こ、これッ!」
手探りで、しかし強くは触れないように
さなは目を凝らしながら確かめる。
そして、それが何か確信出来た時
震える声を上げた。
その瞬間に背後に来る静かな気配。
「 ・・・・・・君の為ですよ、さなちゃん。」
「 ッ!」
いきなり、
さなの耳元で囁かれる
落ち着いたトーンの声。
「ふぅ、・・・全く。
夏目君もそうですが、君も
頭より先に行動に出るタイプのようですね。
周一さんの言っている事は、
君にも勿論当てはまりますよ。」
「 ・・・的場さん」
やれやれ、と言うように
わざとらしく溜息を吐き、
さなの背後から離れる際に
さなの頭を優しくポンポンと触れる的場。
そのままさなの横に移動した的場は
さなが触れていた健司の腕を
さなに代わって持ち上げる。
「 ・・・あのままでは、
さなちゃんの手が無くなっていましたよ。」
的場は言葉だけをさなに向けながら
健司の腕から突き出る細長い棒を
ズズッと嫌な音を立て抜き取った。
「 ぐッ!・・・うぁあッ!!」
的場の行為に
健司が短い悲鳴を上げる。
そして、
その的場によりテキパキと熟される応急処置。
痛々しい姿ではあるが、
さなは眉をひそめて見入っていた。