第11章 ◆人と家族
二度目の鈍い音が廊下に低く響いた。
そして、
ー・・・カラン、
軽い何かの転がる音が続け様に響く。
健司の持つナイフが
冷たい廊下の床へ落とされたのだ。
「さな!」
「・・・ッ!」
健司とさなが離されるその瞬間に
夏目はさなの手を後ろから握ったまま
二人同時に床に膝を付いた。
「 夏目!さなちゃん!」
「 血が・・・!
何か、抑える物を・・・ッ!」
直ぐに二人の元へやってくる名取が
夏目の言葉にビリッと服の袖を破り
応急処置として素早い手付きで
さなの手に巻き付ける。
その間、夏目がさなの手の出血を
抑えていた為に
夏目の手は真っ赤に染まっていた。
「ご、ごめんなさい・・・。」
そんな夏目の手を見つめながら
小さく零されるさなからの謝罪の言葉。
「 本当に・・・、
無茶をするなよ・・・。」
名取にされるがまま
大人しく両手を出して処置されている
さなの手から血が零れなくなった時、
巻かれ終わったさなの手を
夏目が今度は優しく握り
安堵の息を漏らす如く呟いた。
「 ・・・。」
しかし、
その言葉を聞いていた名取が
ピクリと眉を上げる。
「 ・・・夏目、
人が無茶するのを見る
という気持ちがどんな物か分かったかい?
・・・私は常に、
夏目に対して同じ感情を抱いているんだ。
少しは私の気持ちも理解してくれたかな?」
ここぞとばかりに
常日頃の胸の内を晒す名取に
夏目はハッと吾に帰った。
「あ、いや・・・それは・・・その、
す、すみません・・・。」
名取の言葉に返す言葉も無い夏目は
俯き、ただ謝るだけだった。
そして、
そんなやり取りがー段落ついた時だった・・・
「 ・・・・・・くっ。」
目の前に居た健司も
堪えるような声を上げながら
腕を抑え、カクンと跪く。
「 ・・・ッ」
その抑えた腕からは
赤い血が滲み
そのまま静かに滴り落ちていた。
「 健、司さ・・・ん・・・?」