第11章 ◆人と家族
カラン、と転がる
健司の腕に刺さっていた細く長い棒。
それは、
「 矢・・・?」
さなの後ろで
夏目が小さく疑問を呈す。
それは紛れもない
的場の得意とする武器、矢。
よく見れば的場の肩には弓が掛けられており
的場のうち放った矢が
健司の腕を貫通した事が分かる。
「 ・・・的場、お前・・・!」
「えぇ、
序に動けなくしておきましたよ、健司さん。」
パンパンと手を叩き
その場に立ち上がる的場。
その足元には
的場の手により処置された腕と
片方の腕が重なり
札で縛られ身動きの取れない状態の健司が
的場を睨み見上げていた。
そして、
的場の反対側に移動してきた名取が
健司の横に膝を付き
肩と腰を支えるようにして健司を立たせると
「・・・健司さん、
祓い屋界からの追放は免れません。
分かっていますね。」
静かにそう告げてその場を離れる。
直ぐに的場も加わり、
二人で健司を支えながら階段の方へ足を進めた。
「 ・・・ッ!」
唇を噛み締め
二人に支えられて足を運ぶ健司は
諦めたように二人に体重を預け
言葉も出ないでいた。
その三人を見ながら
さなもその場に立ち上がる。
「 さな、俺たちも行こう。」
ふと、横に立つ夏目が
まだ足元がふらつくさなの腰を支え
小さく微笑んだ。
「 はい、・・・帰りましょう。」
夏目の言葉に
笑顔で返すさなが
大きく一回頷いた。
さなは妖ではなく、
人として
健司と家族のまま。
次第に薄く明るくなる窓の外を一目見て
小さな安堵を感じながら
三人の後に続く。
そして
その場から五人が立ち去った後、
ー・・・ボコボコ、と
術の行われた部屋で
奇妙な音がざわつき
陣の中に広がる赤黒い妖の血が
凹凸をつけて変形している事に
五人は誰一人、
気付く事はなかった。