第11章 ◆人と家族
「・・・さて、
そろそろ楽にしてやろう。
まだ術の途中なんだ。
早く完成させなければ・・・。」
健司は名取と的場に向けていた体を
夏目と向かい合わせにする。
「 ・・・チッ。」
「 ・・・。」
その様子をなす術もなく
武器を構え傍観するだけの名取が舌打ちを零し
的場は表情を変えずにその場に立ち尽くしていた。
そして、
「 ・・・貴様も消えろ。」
健司の掛け声と共に
健司がナイフを振り上げる。
「 夏目ッ!」
名取の声が船内中を響かせた。
ーーーードスッ・・・!!
鈍い音が広がる。
そして、その場に崩れるーーーー・・・夏目。
ナイフの衝撃と共に
健司が夏目の頭部から手を離したのだ。
「 ・・・ッ!」
息を呑む名取と
未だ真剣な表情で微動だにしない的場が
目を細める。
そんな二人の視線の先
健司の立つその場の床一面には
刻々と広がる血液の赤・・・。
しかし・・・
「 ・・・・・・・・・?!」
目の前の光景に
健司は目を見開いた。
・・・その理由は簡単で、
自身の振り下ろしたナイフの尖端
そこには
「 ・・・さな?!」
想定外の人物が居たからだ。
「 ど、どうして・・・!」
ナイフを両手で握り
ボタボタと零れ落ちる血液すらも気にも止めず
震える手で必死にナイフを抑える。
「 ゲホッ・・・ゲホ・・・ッ!
さな・・・ッ?!」
咄嗟にさなに倒された夏目が起き上がり、
目の前でナイフを食い止めるさなを見て
驚愕を隠せない。
「 ・・・許さな、い・・・っ!
この人を・・・傷、付けないで」
垂れ下がる長い黒髪で
その表情を伺う事は出来ないが、
珍しく低い声で
絞るように言葉を吐くさな。
「 ・・・こ、の・・・っ!」
「・・・さな!手を離せ!」
健司がナイフに力を込める。
それに気付いた夏目が声を上げた時・・・
ーーードスッ・・・。