第11章 ◆人と家族
「この術が成功していれば・・・
成功していれば、
今頃さなは夏目レイコの影となり
この世に妖としてまた存在する。
その筈だったのに・・・・・・・・・
狂わせやがって・・・!」
ふらふら、とゆっくり
夏目とさなに近付く健司が
二人の目の前で足を止める。
それと同時に
声を荒らげて強調する
恐らくは健司の本音。
「ッく!」
感情的に叫ぶ健司の姿に
ビクッと肩を震わす夏目の頭を
健司は容赦なく鷲掴みにした。
「夏目!」
「夏目くんッ!」
「 ・・・動くな。」
名取と的場が近付こうと武器を構えれば
健司の低い冷徹な声が廊下に響いた。
「それ以上近付けば
こいつの、この首を切るぞ・・・。」
健司はゆっくりと、
名取と的場の方向へと
振り替える。
自身の手で鷲掴みにしている夏目の頭を
名取と的場に見せつけるように・・・
夏目のその首にナイフを当てがった。
「お前達が、
・・・居なければ良かったんだ。」
「 ぅ・・・ッぐ!」
段々と込められる健司の力に
夏目も、その腕を離そうと
健司の腕を掴んだ。
ー・・・その時、
「 ぁっ!」
夏目が離すまいと抱いていた
さなの華奢な身体が
するり、と滑るように
重力に従い夏目の腕から崩れる。
「 ・・・さな・・・っ!」
夏目の頭部を掴む健司の腕を掴みながら
もう片方の手を
ぐったりと横たわるさなに向かって
伸ばしたものの、届く事はなく
夏目の片手は空気を掻いた。
「・・・今の状況で余所見するとは
お前にとって余程大事なんだな。
さなも喜ぶぞ、
・・・嗚呼、もう意識は無いのか、
ふっ・・・。」
「 あ、ぅ・・・ッ!」
夏目に嫌味を含ませた言葉を投げ掛ける健司は
更に力を強めていた。