第11章 ◆人と家族
健司の言葉に
その場に居た四人が
凍り付くように固まり、
少しの沈黙が流れた。
「 ・・・。」
そして、
「夏目・・・レイコ・・・?」
沈黙を破ったのは
その名の人物、夏目レイコを祖母にもつ
夏目。
呟くように出たその声は
驚きの余り思わず零れたかのようで
さなを庇うように屈んでいる為、
視線だけを鋭く健司に向けていた。
「 あぁ、そうだ。
・・・その目、その髪質、
何を取っても
夏目レイコにそっくりなお前の祖母の事だ。」
「けれど・・・、
あなたの年齢では
祖母と接触出来ませんよ。」
健司は夏目に人差し指を向けながら
見下すように夏目へ向き
夏目の祖母という事を肯定して話す。
そして、
健司は見た目からして
高く見積もっても年齢は30代半ば。
若くして亡くなった夏目レイコには
どう足掻いても
物心が付いた年齢以上の健司は接触できない。
その事を冷静に示唆する夏目に
健司は眉間に皺を寄せた。
「 ・・・だから、何だ?
接触せずとも噂は聞いていた。
その噂で僕は夏目レイコへ憧れを抱いた。
同時に守ってやりたかった、という
後悔も出始めて
その想いが強くなったんだ。」
誰かが誰かへ好意を寄せる、
という事の原因等は各々の自由である。
その行き過ぎた個人差によって
健司は得体の知れない感情を閉じ込め
今まで生きていた。
そして
ぶつけ所の無い健司の感情は
時が経つにつれ次第に大きくなり、
それは呪いをも遂行する程
狂気的なものへと変わっていったのだ。
「・・・妖が見える事から
人間から変人扱いされて
強過ぎる妖力の所為で
妖からも恐れられていた彼女の為に
僕は修行を重ね妖力を身に付けた。
・・・彼女を卑しめた妖を祓う為に。」
鋭く夏目を睨む健司の目は
夏目レイコを話をする間
瞬間的だが、優しい目に変わる。
・・・夏目はそれを見逃していなかった。
「 ・・・っ。」