第11章 ◆人と家族
「 なっ・・・?!」
健司が白い布を放り上げた瞬間
パラパラという音と共に
目の前に広がる白い紙吹雪。
そして
白い布の中には、
ゼェゼェと荒い呼吸を繰り返すさなを
庇うように抱え、健司を睨みつける
・・・一人の少年の姿。
「 お前は・・・・・・
夏、目?」
日本人としては薄い色素の髪色と
瞳の色をもつ一見華奢な少年。
その姿からは普段
きっと見慣れないであろう鋭い視線に
健司も自然と視線がきつくなる。
「 的場の部下と偽って入って来た者、
その時にさなを攫ったか・・・。
ふん、小賢しい事を。
・・・さなに何をした。
あの致死量の毒で
さながまだ動ける筈は無いんだが?」
「 ・・・。」
ゆっくりと、一歩ずつ健司が近付く。
それに動じる事無く睨み付ける夏目は
健司の問にも答えず鋭い視線を送るだけ。
「 ・・・そうか。
答えないなら、其処を退け。
もしくは・・・」
話しながら近付く健司。
健司と夏目の距離が然程離れて居なかった為に
直ぐ夏目の目の前に辿り着い健司が
夏目の首を目掛けて片手を振り上げた。
「 ・・・お前もここで消えるんだな。」
ーバシッ!
「 ・・・!」
勢い良く振り下ろされた健司の腕は
夏目の前で止まる。
「 ・・・治癒のまじない、ですよ。
健司さん、貴方から教わった
唯一の札の術。
それを私が夏目君に教えたんです。」
健司の腕を
健司の背後から掴む人物。
その低い声のトーンから
誰かはすぐ判断出来た。
「 ・・・的場ッ。」
健司は掴まれていた腕を
直ぐに振り払い体勢を立て直す。
「 しぶとい奴目・・・!」
そう小さく呟いた健司は
近くに置かれていた小テーブルの花瓶を手に取り
咄嗟に的場へ投げ付けた。
ーバリンッ!
床に散らばる花の上に
花瓶の破片が舞った。