第11章 ◆人と家族
「 け、健・・・司、・・・さ・・・ッ」
健司の手により
ミシミシと締め上げられるさなの首。
さなは健司の両腕を掴むが
その力は殆ど無く、ただ触れる程度だった。
「 ・・・ッ・・・!」
自身の首を力一杯に締め上げる
目の前の健司。
それはさなにとっては紛れもない身内、
さなの抵抗も虚しく
その名を呼び続ける事さえも
出来なくなっていた。
ー・・・。
さなの視界がぼやける。
それは、
意識が朦朧としているからでは無い。
さな自身の感情による生理現象、
・・・涙が滲んでいるからだ。
ー・・・健司、さん・・・!
さなの瞳から溢れた一滴の涙。
その一筋の涙跡が健司の視界に映る。
「 ・・・っ!」
初めて目にするさなの涙に
健司は思わず手の力を緩めた。
その瞬間ー・・・
「 さなを、・・・離せ。」
聞き覚えのある
少し高めの声色が
健司の耳元に届く。
そして、
ふわっと目の前に広がる青白い光線。
「 なっ?!」
ー・・・何だッ?この光は!
その青白い光線は
深夜の海上に浮かぶ船内には
頭に響く程の眩さだった。
健司は目を伏せる為に
さなから手を離す。
「 ・・・くそっ!」
あと少しの所で・・・
さなから手を離した事に
健司は心の声を漏らしていた。
やがて、
青白い光線はフェードアウトするように収まり
薄暗い廊下をまたもや暗がりへと変えた。
「 ・・・?」
先程の明るさからは
未だに目が慣れない暗がりの中、
目の前に居たさなへ視線を戻せば
薄らと見える
暗闇の中に浮かぶ白い靄。
健司は目を細めじっとその物体に集中し
暗闇に目が慣れるのを待った。
・・・徐々に見えてくる
白い靄のハッキリとした輪郭。
それはまるで
何かに覆い被さる様に掛けられる白い布。
「 ・・・この!」
視界が暗闇に慣れないまま
健司はその布を引っ張り、
そのまま背後へ放り投げた。