第11章 ◆人と家族
「 駄目っ!」
「 なっ!?」
健司が後ろ向きのまま
部屋の外へ出ようとした時
ふわ、と健司の背中から
しがみ付く何か。
その何かに阻まれ
健司は外に出る事が出来ず
そのままドア先で立ち止まる。
「 ・・・っ!」
唯一動く顔を可動域ギリギリまで移動させ
健司はその正体に視線を向ける。
健司が目にした何か、其は
「 ・・・さなッ?!」
「 私・・・なら
此処に、居ます・・・!」
ギュッとしがみ付く形で
健司に抱き着くさなが
先程の怪我からか青い顔で
健司を見上げていた。
その端切れの悪い滑舌は
怪我の具合が悪い事を顕している。
「 そうか・・・
何処に行ったかと思えば、
そういう事か・・・
ふっ、
探す手間が省けた。」
さなに向けていた視線を
ゆっくり前に戻した健司がそう言うと
左腕を振り上げて
しがみ付くさなを薙ぎ払う。
「 ぁッ! 」
小さく悲鳴をあげ、
廊下を挟んで反対側の扉まで
軽々と飛ばされるさなは
そのまま床に蹲る。
「 ・・・ぅ」
ジンジンと痛む後頭部と
ヒリヒリと疼く首元で視界が揺らぐ。
さなはその痛みをぐっと堪え
何とか顔を上げると
「 さな、
これで本当に終わりだ。」
いつの間にかさなの目の前に立つ健司が
さなを見下ろし冷たく放つ。
「 さなちゃん・・・!」
名取がさなの名を呼ぶその瞬間に
健司の両手が
さなの首元を締め付けた。
「 ぅッ・・・ぐ・・・!
健、司・・・さん・・・」
声にならない声を発し
殆ど出ない力で健司の腕を掴み、
さなはただ健司を見上げる。