第11章 ◆人と家族
「 ふん、二人共
職という生命を失う覚悟なんだろうな?」
キラリと反射する健司の持つナイフ。
その光が的場と名取に届いた頃、
二人は互いに見つめると
ふっと小さな笑みを零した。
そして、ほぼ同時に
目の前の健司に視線を向けると
「 「 ええ、勿論。」」
二人同時に微笑み返した。
「 尤も・・・
健司さん、貴方が今後
職を続けられたらの話ですよ。」
「 祓い屋の総括と言えど、
禁術に手を出せばこの業界から干されるのは
目に見えている。
貴方が一番よくご存知でしょう?」
的場と名取が交互に話す。
それを健司は、
苛立ちからかフルフルと震えながら
聞いていた。
「 あぁ・・・、
不協和音のお前達二人が消えれば
僕も仕事が続けられる
という事もな。」
健司がそう言い放った途端
カチ・・・と小さな音が鳴り
チクタクと少し早めの時計の秒針音が
部屋中に鳴り響いた。
「 これは?」
「 何の音だ?」
的場と名取が部屋中を見渡す。
時計のような音の根源らしき物は見当たらず
視線を健司に移せば
「 お前達は此処で散れ!」
瞬間的に的場と名取の目の前に来ていた健司が
二人を目掛けて真横にナイフを斬り裂く。
「 ・・・っ!」
「 なっ!」
咄嗟に飛び退く的場と対照的に
名取はそのナイフを木で防ぐ。
「 退けっ!」
「 っぐ・・・!」
ナイフを防がれ、手を引くと
次に健司は名取の腹部に一蹴り入れた。
予想していなかった攻撃に
名取が諸に健司の蹴りを食らうと
その場で蹌踉めき跪く。
「 ゲホッ!」
健司が咽る名取を確認した後
「 お前もだ!」
背後の的場に向け
振り向きざまにナイフを投げ付けた。
「 ・・・くっ!」
間一髪の所でナイフを避けたものの
的場の左腕にナイフが掠り
破れた袖に赤い滲みが出来る。
「 ・・・残念だったな、的場。
それには致死量の毒が塗ってある。
・・・精々、蘇生ごっこでもしていろ。」
そう言って健司は
後ろ向きのまま部屋の外へと出ようとした。
ー・・・ガシッ
「 ・・・?」